重要無形民俗文化財 お山参詣

岩木山


青森県西部、津軽平野の南西部にある円錐(えんすい)形の火山。標高1625メートル。

山容が富士山に似ているところから津軽富士の別名がある。鳥海(ちょうかい)火山帯に属する複式火山で、外輪山は山頂付近に発達し、その中に中央火口丘がそびえる。外輪山の西半部は爆発で欠損し、東半部に鳥海山(1502メートル)、巌鬼山(がんきさん)(1456メートル)がある。中央火口丘が狭義の岩木山である。

標高500メートル以上は比較的急傾斜をなし、大小数個の爆裂火口や硫気孔があって、山体を深くえぐる谷頭となっている。500メートル以下が裾野(すその)で、大部分は火山性の泥流堆積物(たいせきぶつ)と火山性扇状地の堆積物である。噴火は記録のうえでは21回あり、最後の噴火は1863年(文久3)3月23日である。

山麓(さんろく)一帯は藩政時代には馬の牧場や草刈り場として利用され、第二次世界大戦後は開拓が行われたが、二、三の開拓地を除いては十分な成果をあげていない。1965年(昭和40)に山麓の岳(だけ)温泉から八合目まで自動車道岩木山スカイラインが完成し、鳥海山噴火口までリフトも架設され、容易に登山ができるようになった。

岩木山神社


弘前(ひろさき)市百沢の岩木山(いわきやま)神社は、津軽富士とも呼ばれる岩木山の麓に1200年前に築かれ、社殿や楼門は、江戸初期から元禄時代にかけて、代々の津軽藩主が造営・寄進。 極彩色の彫刻の社殿、22mの巨大な楼門等、重要文化財に指定されている建物群は見事である。

岩木山神社は、津軽一円の信仰を集めており、津軽の人々は古くから岩木山を信仰し、天候の変化を山にかかる雲の動きで予知するなど、日常生活のよりどころとしている。

旧暦8月1日の奥宮神賑祭(お山参詣)の行事は国の重要無形民族文化財に指定され、1週間、山麓の集落ごとに若者たちを中心に、精進潔斎した人々が白装束で御幣や幟(のぼり)を立てて街道を練り歩き、神社参拝の後、豊作祈願のため『さいぎ、さいぎ』の登山囃子で、奥の宮を目指す。山頂まで(約6km)を行列する。

お山参詣


重要無形民俗文化財 お山参詣は、旧暦8月朔日、黄金の稲穂が頭垂れる頃、五穀豊穣の感謝と祈願をこめ、山頂奥宮に村落毎に団体で登拝する古くからの行事です。

登拝に先立ち、各村々の産土神の社に一週間精進潔斎し、新しい白装束に身を固め、登拝回数に応じ色とりどりの御幣を持ち、別に大幟や大御幣を力自慢の若者が捧持して登山囃子も賑々しく唱和して街道を練歩き、総産土神の大社と称える岩木山神社に参拝します。

神域の禊所で再び身を清め、神前で修祓を受けて、夜半に至り朔日山の朝日を拝すべく元気に奥宮に向い登山します。その道程約6キロ七曲坂の難所、女人禁制時代の名残り姥石、焼止りで中腹、浄水湧く錫丈清水、種蒔苗代の池で占いし、急な御坂を経て、4時間で奥宮に達します

登山囃子・下山囃子


お山参詣の祭囃子の起源は「真言密教の音楽である」と言われます。その昔は各村々に独特の曲があり、囃子の種類も登山囃子、下山囃子のほかに「餅つき囃子」「なおらい囃子」など多くの囃子がありました。
もともと「登山囃子」は「登拝(とはい)」の囃子と呼ばれていたようです。その原型となったのが。岩木山の麓にあった「百沢寺」(ひゃくたくじ)の住職が作ったとされる登拝の唱文(しょうもん)です。これは現在は「さいぎさいぎ」と呼ばれています。(中略)藩政時代の登拝の囃子は大きく分けると新田地方(西郡)の囃子と古田(こでん)地方(中弘南)の囃子にというふうに特徴が分かれていたようです。その他にも各村々で囃子があったようです。その後も登山囃子は幾多の変化を遂げてきたと言われています。
そして昭和24年に登山囃子研究会という組織が設立されました。その後昭和25年の8月に、ヤマヤタダシ氏・コンケンゾウ氏・キムラゲンゾウ氏を中心に、それまで村々で特徴のあった「登拝(とはい)の囃子」のいいところを集め、古い囃子の曲調をくずさないようにして、現在広く演奏されている「共通の囃子」が作られました。
登山囃子という言葉はこのとき出来たといいます。それ以前は「登拝(とはい)」の囃子と呼ばれてました。
津軽の暮らしと文化 ばだら倶楽部より引用)

お山参詣の唱文(登山)

  • 懺悔懺悔(サイギサイギ)/過去の罪過を悔い改め神仏に告げこれを謝す。
  • 六根懺悔(ドッコイサイギ)/人間の感ずる六つの根元。目・耳・鼻・舌・身・意の六根の迷いを捨てて汚れのない身になる。
  • 御山八代(オヤマサハツダイ)/観音菩薩・弥勒菩薩・文殊菩薩・地蔵観音・普賢菩薩・不動明王・虚空蔵菩薩・金剛夜叉明王
  • 金剛道者(コウゴウドウサ)/金剛石のように揺るぎない信仰を持つ巡礼を意味します。
  • 一々礼拝(イーツニナノハイ)/八大柱の神仏を一柱ごとに礼拝する。
  • 南無帰命頂礼(ナムキンミョウチョウライ)/身命をささげて仏菩薩に帰依し神仏のいましめに従う。

お山参詣の唱文(下山)

岩木山神社に無事登拝の報告をした後は、楼門からバダラ踊りをして帰途につきます。

  • いい山かげた朔日山かげた…バダラ、バダラ、バダラヨー

バダラ、バダラ…「跋折羅」=バサラ=おテンバ娘などのように極端にはしゃぐ。おどける。はめをはずす。バダラ踊りは、登拝を無事すませたという喜びと、お山がそれぞれの願い事を聞き入れ登拝した方々に神通力が宿ったということを表現したものです。

岩木登山ばやし保存会

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